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────「おかえりなさい!」
今日も19時キッカリに春紀は帰ってきた。
「ただいま」
平常運転のノーリアクション。
だけど私には秘策がある。
山田さん直伝のマンネリ解消法が!
「お疲れさまー!」
ふわりと香る匂いに気づいてほしくて、わざと自分からハグする。
①いつもと違う匂いをさせて、旦那の気を引くべし!
いつもだったら香水は、昔無理やり春紀に好きな匂いを選ばせて購入したものをつけてるんだけど。(ちなみに桃の匂い)
久しぶりに新しい香水を買った。
大人っぽさもある、爽やかなフローラル系の香り。
春紀、気づいてくれるかな。
「………………」
無言でじっと見つめられ、ドキッとしてしまう。
これ、いい流れなんじゃ?
「……サバミソの匂いする」
「そっちか~い」
まさか。フローラルがサバミソに負けるわけないのに!
こんなに近づいても、気づかないの?
「……美味そう」
無意識にペロリと舌を出す春紀の色気にやられているのは私の方で。
「好き! 好き! 好き!」
「………………」
落ち着け!
これじゃ計画が水の泡だ。
次の作戦を練り直さないと。
「今支度するから、先お風呂入ってくれば?」
また一緒にお風呂に入りたいところだけど、グッと堪える。
②旦那の前で軽々しく脱ぐべからず。
これが大事らしいから。
「………………」
「……何?」
何も言わずにまたじっと見てくる春紀に困惑する。
そんな目で見つめられると、私は……。
「好き!」
だから落ち着かないと!
「ほ、ほら、早く入ってきて」
「………………なんか、背中、痒いな」
「え!? どうしたの!? 大丈夫!? 肌荒れ!?」
心配で思わず背中をさする。
さすっているうちに、一緒にお風呂に入りたい欲がふつふつと湧いてきた。
「お、お背中……」
だけどここは我慢だ!
「味噌汁温め直してくる!」
「………………」
私がキッチンに戻ると、春紀は静かに脱衣所へと消えていった。
シャワーの音に鼻息荒く耳をそばだてる。
ああ、マンネリ解消法ってこんなにも拷問だったとは。
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