コンタクトデッキで会いましょう。

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 瀬戸さんの優しさだってそうだ。彼には運転という得意分野があってそれを苦に思わないからこうして遠距離恋愛をしている。俺を助手席に乗せてどこまでもN-VANを走らせてくれる。いくらでも頼れるのだ。そういう優しさを振り切って生きてきたのが俺の人生だった。それが「迷惑をかけたくない」という動機であっても、振り切られた方は良い思いをしないだろう。 「南巳君待ってるんじゃないの」  依蕗の一言に俺は素直に「うん」と答えた。多分瀬戸さんは待っている。俺は「ありがとう」と言って通話を終えた。それからすぐにメッセージアプリから瀬戸さんの連絡先に繋いだ。少し長めに着信音を鳴らしていると瀬戸さんが応答した。「すみません。すぐに話したくて」と俺から切り出した。 「いえ。すぐに出られなくてすみません」 「近いうちに会えませんか」 「いいですよ」即答だった。「明日の仕事終わりにでも行きます」 「あ、いえ、次の休みとかでいいんですけど」 「そうですか?僕はすぐに会いたかったんだけどな」  瀬戸さんの素直な言葉にドキリとした。と同時に羨ましくもなった。俺も瀬戸さんみたいに自分の気持ちを気負わず素直に話せるようになりたい。俺は「じゃあ」と言った。「明日、来てもらってもいいですか」 「はい」と答えた瀬戸さんはどこか嬉しそうな声だった。
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