テレポーテーションは実在した!? 軽四輪車ホンダ「N-VAN」

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 高速道路も車が少なくなってきて、大きなトラックが目立つようになった。軽自動車のN-VANがさらに小さく思える。病院ではほとんど水分を摂らなかったので喉が渇いていた。瀬戸さんから貰ったペットボトルのお茶を飲んだ。  看板に見慣れた地名が現れた頃、ようやく地元のラジオ局の電波を拾ったカーステレオが昭和歌謡を垂れ流し始めた。瀬戸さんが「いしのまきのひーとー」と歌い始めた。ぼんやりしていた俺はハッとして財布を出した。こんなに長い距離を運転させてしまった。高速代ぐらい払わなければ。 「あ、交通費とかいらないですよ」前を見ながら瀬戸さんが言った。 「でも高速代結構かかりましたよね」 「大丈夫です」 「いや流石に」 「じゃあ」と少し間を置いてから瀬戸さんは「今度福島の名産品ください。美味しいやつ」と言った。 「え」 「お金よりモノが嬉しいなー、なんて」へへへ、と子どもっぽく笑う瀬戸さん。MT車を乗りこなす姿とのギャップのせいか、やけに可愛らしく見えた。  結局瀬戸さんは俺の住んでいるアパートまで車を運転してくれた。「流石に明日は年休取りますよね」と言われ、少し迷ったが「はい」と頷いた。瀬戸さんはガソリンスタンドのレシートの裏にアルファベットの羅列を書いて渡した。
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