テレポーテーションは実在した!? 軽四輪車ホンダ「N-VAN」

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 結局、おじいちゃんが入院したことは職場では言えなかった。わざわざ公務員という安定した仕事を辞めて介護をすると宣言したのに、こんな形で躓くなんて。瀬戸さんも運転手を買って出たことは誰にも話していないようだった。その配慮がありがたかった。  送別会に瀬戸さんは出席しなかった。瀬戸さんは職場の食事会や飲み会にはほとんど参加しない。最後に改めて直接お礼を言いたかったが、言いそびれてしまった。  本庁に転出届を提出した。同期と目が合ったが軽く会釈するだけで済ませた。飯野町へは電車と高速バス、県営バスを乗り継いで向かった。瀬戸さんと一度一緒にここまで来てしまったせいか、少し寂しかった。  俺がこれから住む家は、市役所の飯野支所に近い商店街の一角にある一軒家だ。今は寂れているが一応この町のメインストリートである。おじいちゃんは若い頃洋菓子店で働いていてその流れで鶏卵を卸して売るようになり、その仕事をお父さんが独り立ちするまで続けていたそうで、その名残か家には玄関の他にもうひとつ広い出入り口がある。大通りに面しているのはこの出入り口の方で、家の出入りは何かとこちらを使いがちだった。今回も俺はここから家に入って荷物を下ろした。
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