テレポーテーションは実在した!? 軽四輪車ホンダ「N-VAN」

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 瀬戸さんの運転するN-VANを見送って家に入る。居間の卓袱台の上に置かれた空の湯呑みを見て急に寂しさが込み上げてきた。引っ越してから誰かを家に上げることもなかったし、他人と会話もろくにしていなかった。自分が思っていた以上にひとりが辛かったのだと気付いた。と、同時に、瀬戸さんと一緒にいた時間が楽しかったと思った。じわじわ涙が浮かんできたので、溢れる前に袖で拭った。  玄関のベルの音が鳴ってハッとした。顔を上げて引き戸を開けると瀬戸さんが立っていた。彼は「すみませーん、スマホ忘れちゃって」と申し訳なさそうに苦笑しツーブロックの頭を掻いた。 「あ、取ってきます」と俺は居間に引っ込んだ。瀬戸さんが座っていた座布団のそばに、透明なカバーを着けただけのシンプルなスマートフォンが転がっていた。拾い上げて玄関で待つ瀬戸さんに渡した。 「良かったー、ありがとうございます」と瀬戸さんがスマートフォンを受け取った。それから俺の顔を見た。俺は敢えて目を逸らしたり言い訳をしたりはしなかった。ちょっと泣いたことぐらいバレないだろう、と思った。 「帰ったらまたLINEしますね」
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