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清潔な病室の清潔な布団の中でおじいちゃんは顔や目を僅かに動かして俺の存在を確認した。声は出ない。
おじいちゃんが入院して1ヶ月半。発熱やら何やらの体調不良で分院と本院を行ったり来たりしながら彼は命を繋ぎ止めている。看護師さんがにこにこと笑顔でおじいちゃんに「お孫さん来ましたよ」と声を掛けた。俺も同じようにしたかったがいつも上手くできない。聞いているのかいないのかわからないおじいちゃんに意識があった頃と同じように声を掛けることができなかった。
すぐに病室を出るのも躊躇った。少しは一緒にいようと思い椅子に座った。先ほど寄ったスーパーで貰ってきた求人情報誌を開いた。一応、これからのことは考えようと思っていた。俺も貯金はしていたし、おじいちゃんの蓄えで入院費は賄える。それでも減るものは減るので、このままのんびりしているわけにもいかない。
パラパラとページを捲る音が静かな病室に響く。おじいちゃんとおばあちゃんと、3人で暮らしていた頃を思い出した。自分の部屋のなかった俺が寛ぐのは専ら居間だった。スマートフォンを弄る俺の横でおじいちゃんは新聞を捲っていた。ぼんやりと天井を眺めるおじいちゃんの顔を見て俺は少しだけ笑えた。
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