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瀬戸さんが家に来ると決まった途端掃除のモチベーションが上がる。別に瀬戸さんに見られるような部屋じゃなくても、だ。病院から戻ると仏間の布団を畳んで掃除機をかけた。押し入れを開けてみると古いプレーヤーとCDが出てきたので適当に選んで再生してみた。氷川きよしだ。聴いていたのはおじいちゃんだろうか、おばあちゃんだろうか。どちらも音楽を熱心に聴いている様子は見たことがなかった。
瀬戸さんからメッセージが届いた。「きよしのズンドコ節」を口ずさみながらスマートフォンを弄る。「明日9時頃そちらに着きます」とのこと。歌が止まった。9時到着と言うとあっちを出るのは7時。ちょっと早くない?仕事休みの日なのに。
「もっとゆっくりでいいですよ」と返信しても良かった。が、辞めた。早く会いたいしできるだけ長く一緒にいたいと思った。俺、人恋し過ぎでは?瀬戸さんに寄りかかりすぎな気もした。
翌日やって来た瀬戸さんはやはりゆるゆるな服を着ていた。「こっちの方が季節が少し早く進んでる気がします」と言いながらお茶を啜った。「そうだ。この前のお菓子本当に美味しかったです。袋に書いてあるお店の住所、この辺りですよね」
「そうですね。ここの商店街のお菓子屋さんです」
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