15人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃー、上ってみますか」と瀬戸さんが歩き出した。俺は後ろをついて行った。千貫森の標高は500メートルを少し下回るくらい。遊歩道ならぬ「UFO道」が整備されているので道に迷うこともない。各地点に町内にあったような宇宙人の石像が設置されていて、瀬戸さんは律儀に一体一体スマホのカメラに収めて名前を読んでいた。デカメダ、チーミー、ゴモラ等々。頂上までの高さも書いてあるので登山の際の励みにはなる。
途中、頂上とは別の展望スペースがあったのでベンチに座って休憩した。歩いていると意識しなかった疲労がここにきてドッと押し寄せる。風で汗が冷えていく。瀬戸さんは「ここでも充分眺めいいですよね」と言った。それから通り過ぎる老夫婦に「こんにちは」と挨拶をした。
「こんなにいい所あったなら、早く箭内さんに教えてもらえば良かったです」
「仕事の時は仕事の話しかしてなかったから」
「そうですよねー、仕事ですからねー」
職場の同僚やら上司やらと休みの日にも会うという感覚は、あまり理解できなかった。別に嫌いでもないが、休みの日にも会いたいと思えるほど好きでもない。でも瀬戸さんといると、もう少し皆と仲良くしても良かったかもなと思った。
最初のコメントを投稿しよう!