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残りの道もせっせと歩いた。目の大きな宇宙人モリタンが頂上まで残り50メートルであることを告げ、足元が石を敷いた道に変わり、奇妙な形の展望台が見えた。UFOコンタクトデッキだ。ユータンの石像が「登頂おめでとう」と俺達を歓迎していた。
「着いたー」と瀬戸さんが両手を挙げた。ユータンを撮影しコンタクトデッキに上った。見えるのは山と木と、それに囲まれた道路とそこを走る車ぐらいだ。絶景、という程でもないが、瀬戸さんの前でそれを言うのも野暮なので黙ってついて行った。
「ここでUFO呼んだら来るんですかね」
「どうですかね」
「箭内さんはUFO見たことないんですか」
「ないですねえ」と苦笑した。「そんなに熱心に空を眺めたこともないかも」
「俺もそうかもなー」
俺が仕事中にプライベートなことを話さない理由その2はこれだ。出身地のことを深く話すと大概「UFO見たことあるんですか」と言われる。飯野町は今でこそ福島市の一部だがかつては伊達郡飯野町だった。その名残で出身地を訊ねられたら「福島の飯野です」等と答えたりするが、そうすると「飯野って何があるの」と訊かれる。そこで「UFOの里ですかね」等と答えてしまうとその先は大体決まって「UFO見たことあるの」と来る。
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