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「あはは、まあそうなんですけどね」と包みを開いてチョコを口に入れた。疲れた脳に糖分が効く。少し目が覚めたような気がした。「あとは私が閉めるので、瀬戸さん帰ってください」
「あ、ありがとうございます。じゃあ回覧見てから帰ろうかな」
瀬戸さんがデスクの上の書類を眺め始めた。小さい背中には大き過ぎる作業服を羽織っている。公民館勤務の年数で言えば彼の方が長いしそもそも歳上なのにどこか幼く見えてしまうのは、このオーバーサイズの服装のせいか。デスクトップの向こうの後ろ姿を見ていると思わずキーボードを打つ手が止まってしまった。
マナーモードにしてデスクの上に置いていたスマートフォンがぶるぶる震えた。着信だ。おじいちゃんがお世話になっているグループホームから。瀬戸さんに遠慮するように事務室を出て応答した。いつもの職員さんの声には焦りが滲んでいた。俺も話を聞いて一瞬頭が真っ白になった。何か答えなきゃと思って「とりあえずそっち行きます」と言って通話を切った。
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