15人が本棚に入れています
本棚に追加
瀬戸さんは仕事中、クレーマーの利用者に怒鳴られても厳しい上司に叱られてもあまり落ち込まない人だった。相手の圧力を躱して言われた内容だけをきちんと捉えられる人だ。そんな彼が旧友と再会してこうなるのだからよほどのことがあったのだろう。気にはなるが、訊けるような状況でもない。今はただ寄り添うのみ。
が、こんな時に俺の下心がまたムクムクと顔を覗かせた。赤信号でN-VANを停車させた瀬戸さんを見ていると先ほど風呂場で見た彼の裸体を思い出した。体型をすっかり覆い隠しているオーバーサイズの服。もしかして、緩い服装なのはわざとなのかもしれない。思い返してみれば職場でも肌を露出した服装はあまり見たことがない。夏場でもシャツの上に作業服を羽織っていた。瀬戸君それ暑くないの、と上司に突っ込まれていた。
彼の体を見たのは職場で俺だけかもしれない。そんなことで高揚してしまった。瀬戸さんは落ち込んでいるのに。俺のメンタルケアをしてくれていた瀬戸さんを、今こそ支えるべきなのに。同性とかそういうこと以前に、人間として最悪だ。
家の駐車場に車を入れようとした瀬戸さんに「待って」と言った。瀬戸さんは首を傾げた。
「ごめんなさい。俺、あの」額から変な汗が溢れる。それを拭いながら「瀬戸さんをやらしい目で見てた」
最初のコメントを投稿しよう!