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事務室に戻ると俺の顔を見た瀬戸さんにすぐに「どうかしましたか」と言われた。顔に出したつもりはなかったので驚きと誰かに縋りたい気持ちで思わず「おじいちゃんが」と口にしてしまった。仕事の間は言葉遣いを気にしていたのに「祖父が」とも言えなかった。
「おじいちゃんが倒れたって」
「おじいちゃんって、これから箭内さんが介護するっていう」
「はい」俺は頷き「行かないと」とパソコンの電源を切った。瀬戸さんが駆け寄った。
「おじいちゃん福島でしたっけ」
「あ、はい」
「送って行きます」
俺は慌てて首を横に振る。「福島ですよ。ここから2時間ぐらいかかる」
「今から新幹線のチケット取るのも大変でしょ。俺が乗せていきますよ」
「いや、流石に遠いですから」
「今までお世話になったんだからこれぐらいさせてください」
正直、高速バスで行くか新幹線で行くか、駅に着いてからどうやって目的地まで行くか、その他諸々考えられるような精神状態じゃなかった。「じゃあ」と俺が呟くと瀬戸さんはすぐに荷物をまとめ始めた。
「一回家帰りますか?」
「あ、いや、大丈夫です」
「じゃ、すぐ行きましょう。高速乗ればすぐですよ」
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