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12歳の頃お父さんとお母さんが亡くなって、俺は福島のおじいちゃんとおばあちゃんに育てられた。住んでいたのは飯野町という福島市街地から車で30分ほど移動した先の長閑な地域で、俺はそこでひっそりと青春時代を過ごした。
高校を卒業してすぐに、お父さんとお母さんが生きていた頃に住んでいた町の職員になった。進学にはあまり興味がなかった。早く働いておじいちゃんとおばあちゃんに恩返しがしたいと思っていた。
おばあちゃんが亡くなったのが3年前。おじいちゃんはひとりでも大丈夫と言っていたが、大丈夫じゃなかった。あれよあれよという間に体と脳が衰えた。1年半前から福島市内のグループホームにお世話になっていたが、夜に徘徊したり暴れ回って職員に怪我をさせた。これ以上は面倒を見られないと、やんわりと告げられた。
おばあちゃんが亡くなった時点で飯野町に戻るべきだったのだ。こうなってしまったのは俺にも責任がある。おじいちゃんと暮らすことに決めた。おじいちゃんの介護がどれくらい続くかわからないし、どんな暴力を振るわれるかもわからない。それでも俺が若くて元気な内に全力で向き合いたいと思った。
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