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「ニコラ様、手を離してください。粗相してしまいます……」
ミアは切羽詰まった声でニコラを呼んだ。
のっぴきならない事情がミアを追い詰めていた。
(このままじゃ、シーツどころか、寝台まで染みちゃう……)
「ミア……」
ニコラはまだ夢の中のようで、甘い声でミアを呼び、すりすりと鼻をミアの首に擦り付ける。
「そういうのは要らないので、とりあえずはなしてくださいってば!」
どういう訓練をしたらこのような事が出来るようになるのか、ニコラはミアの手の自由を奪ったまま抱きこんで眠っている。
苦しくないのに、ちっとも身動きが取れない。
結局ミアは、ニコラを慰めることはおろか、身じろぎするばかりで何も自由にならなかった。
よほど疲れていたようで、ニコラはあれから目を覚ますことなく朝まで眠り続けている。しかし、体はミアにずっと反応している。
一晩中、ごりごりと、欲望を押し付けられて、ミアは眠れた気がしなかった。
駄々洩れの欲望を一身に浴びて、ミアだって何も感じないはずはない。
体の芯がうずくばかりか、下着まで濡らしてしまって、ミアはたいそう慌てた。
(こんなに濡れてしまうなんて、聞いていない!)
『あんた、若いし、体が小さいし、濡れにくい体質なんだね。潤滑油をしっかり用意しておかなきゃだめだよ』
花街の教育担当だった姐さんたちがミアに言ったことを思い出す。
姐さんたちがミアを心配して言ったこととは違う事が起きている。
「ニコラ様、起きてください! ニコラ様ってば!!!」
ミアは悲鳴のようにニコラに呼びかけた。
*
ニコラは、今の今まで、姫様に仕える、肉欲にまみれた夢を見ていたが、ミアの声でゆるゆると覚醒していった。
(ああ、そうだ、昨夜はミアに添い寝を頼んだのだった)
まだ、抱きかかえたままのミアの触り心地がよすぎて、また夢に戻ろうとしたのだが、ミアが困り切った顔をしているのに気がついて片目を開けた。
「どうした? きつく抱いて、苦しい思いをさせたか?」
手首も締めた様子はないし、押しつぶしたということもなさそうだ。
相変わらず体の中心はミアを求めて硬く屹立しているが、それ以外はミアを苦しめた様子はなくほっとする。
ミアは、ニコラに拘束されて身動きが取れないまま、ニコラからじりじりと身を離そうとしている。
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