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「ニコラ様、わたし、娼婦がダメなら辞めます。ニコラ様に死なれるくらいなら娼婦以外だって何でもできます。わたしニコラ様が思うよりもっと、したたかなんです。ニコラ様にご心配をかけないところに――どなたかの後妻でも、奉公で置いてくれる所でもなんでも、ニコラ様が心配しない場所を探します。だから、もう、わたしを妻にとおっしゃるのはやめてください……」
ニコラは心臓から耳を離そうとしないミアの小ぶりな頭を撫でる。
「なら、ミアが奉公に行ったところに求婚に行く。好きではない男の妻になるというのなら、横槍をいれに行く。教会で大声で『異議あり』と叫ぶつもりだから覚悟しておくといい」
「じゃあどうすればいいんですか。よその国にでも行けばいいんですか?」
「そんな事が私にとって障害になると思ったら大間違いだ。私がその程度で諦めるとでも? 私をみくびってはいけない」
ニコラは何でもできる男だ。やると言ったらやるのだろうし、決めたら覆すのは難儀だ。
「だから、ニコラ様とは一緒に居られないっていってるんです!」
「そんなはずがあるか」
ニコラは、雑にミアの唇を塞ぐ。今までで一番適当な口付けだった。
そんな適当さでも、ニコラとミアは同じような振り幅で胸が苦しくなる。
「どんな顔をしているか教えてやろうか?」
「え、演技です。娼婦なのでそのくらいできます」
ニコラはむっとしたようでミアの鼻を嚙んだ。
「とんだ頑固者だ。いいか、ミアはそれほど上手い娼婦ではない。むしろ技術無しで、客など付かないほどだ。素人も素人、ド下手だ。客に恋をした演技ができるほどだったらたいしたものだがな」
これにはミアもにカチンときて、今度はミアの眉辺りの肉を啜っているニコラの顎を押し返す。
「じゃぁ、単に欲情しているだけです! 男の人だってそういって娼婦を買うでしょう?」
年季の明けるギリギリでこんな気持ちになるなんて最悪だと、ミアは歯を食いしばった。
一生懸命口を閉じたのに、ニコラにあっという間に主導権を握られて、息が苦しくなるほど舌を喉奥まで挿し入れられる。
ニコラは昏い目をしてミアが泣くまで口を犯し続けた。高めるばかりで絶頂まで連れて行ってもらえなくて苦しいと、真っ赤になって震えるミアに、ニコラはいつになく妖艶な笑みを向ける。
「もういい。どうしても本心を言わないのなら、最後の手段をとるまでだ」
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