相変わらず最低ですね。

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「それが真実でもいい。そうならば、いっそ諦めがつく。心底嫌われていたのなら、ミアに一生会わずに支援だけを申し出るまでだ。とにかく、ミアが安泰に暮らしてくれるなら何でもいいんだ。それと、出来れば花街の仕事以外で生きていけるようにしてやりたい」  タリムは書類を書く手を止めて、蔑んだ目でニコラを見る。 「本当に騎士様は身勝手ですね。そんなこと言って、騎士様も花街に頻繁に出入りしていたそうじゃないですか? それなのに、ミアさんには花街の仕事をさせたくないって、職業差別ですか?」  タリムは花街で働く女たちに頬を叩かれたりするが、彼女たちが働き者で芯の強い所を尊重している。しかし、そこに通いつめる男たちには少々思う所があった。   「ではお聞きしますが、姫は、ロイ・アデルア殿が安定した生活の為に、明日から春を売って生きていくと言い出したらどうするおつもりか? あの見た目だ、さぞや売れっ子になることでしょう。他人に体を明け渡すのが趣味で、天職だというのなら止めはしないが、趣味でもないのに見知らぬ男に尻を差し出すのです。姫は、それだけべたべたと近くに置くアデルア殿が、そうやって生きていく様を見て、何も感じないと?」  ニコラは張りのある声で朗々とタリムに訴える。  タリムは想定外のことを言われて想像が追い付かずに、しきりに空中に視線をやる。  どうにか足りない想像力を働かせた結果、以前覗き見てしまったロイの尻を思い出して、取り乱すことになった。 「ちょっ、し、尻っ? 抱くんじゃなくてロイが抱かれる方ですか? ロイが剣士をやめて、騎士様みたいなごつい男に身を売るのですか?」  自分がタリムの想像に登場させられたのかと、ニコラはさすがに眉を顰める。 「私は趣味ではありませんが、私でなくとも需要はありましょう」 「だ、だめです! ダメ! 殴ってやめさせます。ロイはギルドの仕事だけで食べていけます。お金に困っているなら私が貸します」 「ほら、姫だってそうではないですか! ミアはご存じの通り、城の仕事でも生活していける技量があり、色ごとに長けているわけでもない。もし、仕事がなくて生活が苦しければ、私がいくらでも支援するつもりでいる。結婚すれば一石二鳥なのに、それも断られる始末。いったいどうしたら……」  
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