相変わらず最低ですね。

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 花街のシャーリー・ガルムは強欲だ。そう簡単に花街の従業員を手放さない。   「だからって、こんな気持ち悪い方法、思いついた時点で最低ですからね」  タリムは一度席を立ち、恐ろしい厚さの書類を持ち出してきた。  ニコラとタリムは頭を突き合わせて、それから何時間も書類の枠を埋める作業を続けなければならない。足りない書類があるとニコラはいちいち騎士棟へ向かって、ミアにバレないように書類を集める。  早朝から出かけたというのに、全部終わるまでに、ミアが帰ってくるギリギリの時間までかかってしまった。 「あの、恋とかって、そんないいものですか?」  タリムはくたくたになって最後の書類に印を押す。ニコラはタリムの意図がわからず首をかしげる。  普段はほとんどしないという事務作業続きで、タリムの神経が参ってしまったのかと心配する。 「姫、気は確かですか?」 「単に好奇心です。気を悪くしないでくださいね。私、そういう恋愛至上主義みたいなのあまりよく理解できないんですけど」  そんなことを言うタリムの方がよくわからないとニコラは腕を組む。 「私には、姫とアデルア殿のぼんやりした関係こそ理解できませんが」 「……余計なお世話です」  ニコラがタリムに出会ってから二年以上も経つ。べたべたといつも一緒に居る割に、タリムとロイの関係が進んだようにはちっとも見えない。  だからといって、二人の間に自分が割って入って、ロイと立場を代われるかと言われたら、そこが自分の居場所だと胸を張って言えるとは思えない。 「姫、私はやっと運命に出会いました。騎士は仕えるべき(あるじ)を決めたら、何があっても寄り添うのです」  ニコラは幸せそうに笑う。 「うぇっ……執着きっつ」   ✳︎ 「――というわけで、今飲んだお茶に自白剤をいれた。今から洗いざらい語ってもらうので、そのつもりで頼む」  ミアは自分が飲みきってしまったティーカップに視線を落とす。  良い茶葉で入れてくれたものだからと、ミアは味わって最後の一滴まで飲みきってしまっていた。 「わたしに薬を盛ったのですか? なんてこと……常々頭がおかしいと思っていましたけど、そこまでやりますか? わたし、自白剤を盛られるような罪人じゃないですから!」  ミアは思ったことが全て口の外に出てしまった事に驚き、自分の口を塞いだ。
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