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「ほう、頭が……そう思われていたのか」
ニコラはひくりと頬を引き攣らせる。
暴言は、覚悟していたことだが、実際に聞くとさすがに堪えた。
「ニコラ様、わたしの口元ばかりじろじろと見ているから、またキスを御所望かしらって、馬鹿なことを考えていて損しました。思い通りにならないから自白剤を飲ませるだなんて、お貴族らしい発想ですね……ああ、だめ、また……」
辛辣なミアの心の声は止まらない。
もう後戻りはできないと、ニコラは自分でも展開の予想ができない状況に身を投じた。
「薬が効いてきたな。ミアは何も悪くないのだ。私がミアの本心を知りたいだけで」
「そんなことでギルドまで行ったんですか? ああ、もう、傷が治るまでじっとしていてくださいって言っていたのに。わたしが言いつけを守らなかったら不機嫌になるくせに、わたしのお願いは無視ですか。ニコラ様は何でもできるのに、わたしの話は聞けないんですね――もう! やだ、なんで勝手に口が動くの!」
間髪を入れずにミアの心の声がニコラを突き刺す。ミアに叱られるのはなんだか悪くないぞと、ニコラはもぞりと足を擦り合わせる。
「だいぶ胸に仕舞っていたことが多いようだな……さて、心の準備は出来た。では、色々と教えてもらおうか」
ニコラは逃げ出そうと腰を浮かせたミアの腰を抱き、ソファに戻す。
(もしや、私は本当にミアに好かれていないのでは?)
ニコラはもうこの最初のやり取りだけで、だいぶ絶望的な気持ちだった。
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