許可しよう!

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許可しよう!

「じゃぁ、城でメイドでもさせたら?」  国王は、今日の夕食を決めるような気楽さでニコラに告げた。  半年も家にミアを置いているとなれば、何処かしらから情報が漏れる。 この場合、ニコラの心当たりは、義父リシル・アディアールだった。  リシルは仕えついたセレスタニア王女が亡くなった後も、国王の古い馴染みの友として、国王と連れ立って出かけることがある。  国王に娼婦を囲っていると知れれば、セレスタニア姫の一人娘、タリムに求婚する立場でいることは絶望的になるだろう。  この半年でニコラの生活は大きく変わっていた。  滅多に夜遊びに興じる事もなくなり、夜勤がなければ家に帰って夕食を食べる。  ニコラに何事かが起きている事は噂として上がっているはずだ。 「ニコラの愛妾が、暇を持て余しているという話だろう?」  ギルドのおかげで閑職となりつつあるエイドリアン国王は、騎士たちが忙しく働いているのを暢気に眺めながら、猫の種類が載っている本を真剣に見ている。  酔狂なことに、城で猫を飼うのだそうだ。  実に力の抜けた様子で椅子に深く腰掛けて、本からは目を離さずにニコラとの世間話を続けている。  ここ数日、エイドリアン付きの近衛騎士が、妻の出産で休みをとっており、ニコラが代わりを務めている。  そのせいで、二日で帰れるはずが、もう四日も家に帰れていない。  ミアはアディアール家に預けてきたが、明日には帰ってくるはずだ。  今日こそは家に帰りたいと、ニコラはすっかり帰り支度を済ませていた。 ニコラはそれなりに不機嫌に城での勤めを果たしている。    ドルカトル王国は小国である。  側室を置くことのないこの国では、王家の血を繋ぐため、正当な血族の中であれば傍系でも男女の別なく、生まれ順で王位継承権が与えられる。古くからの因習だ。  七人の王子の世話は、王子達に厳しいニコラ抜きには成し得ない。特に第一王子の素行が悪く、毎度ニコラと対立している。  こうして王の護衛を務めている間も、素行の悪い王子たちの引き起こす細々とした問題で呼び出されるのだ。  王子の護衛を任されるニコラの仕事は、王子たちの悪行に困るメイドや教師たちの後ろから王子たちを睨みつけ威圧することから始まり、説教や、身体を使った話し合いなどになる場合もある。
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