許可しよう!

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 常日頃の王子の世話より、国王の警護ははるかに楽な仕事だ。特に城の中での警護は形ばかりで、国王と世間話ばかりをしている。  世間話ついでに根掘り葉掘りミアについて訊かれて、詳細はぼかしつつも、ミアが仕事に出たいと言っている所まで話が進んだ。 「陛下、ミアを愛妾と呼ぶのは誤謬がございます」  エイドリアンは無心で人の心を抉るような言葉を口にすることがある。  国王として、考える前に言葉を溢す迂闊さはどうなのかと、ごく近くにいる者達は気を揉むこともあるが、外交においては、鋭い切り口で話を進める有能な王という評価をする者も多い。  しかし、姫以外に興味が無いニコラにとっては、素行の悪い王子を生み出し、姫を生み出さなかった王族という認識に過ぎない。  エイドリアンに尊い所があるとすれば、王族に現れやすい、その目の色だ。  ニコラの慕う姫、タリムは、叔父であるエイドリアンと同じように、何色とも形容しがたい深い色の目を受け継いでいる。  エイドリアンの目の色は、いずれ姫として自覚をしたタリムが城に戻った時に、血統を疑う者達に対して、正当性を主張する要素になるだろう。 「愛妾でないなら、抱いていない娼婦?」  エイドリアンはさらにニコラの痛いところを突いてくる。 「恐れながら、益々誤解なされているようで……」 「……では、恋人?」  愛妾という言葉は多少聞き慣れてきていたが、ミアを恋人と呼ばれたのは初めてで、ついエイドリアンが煽っていると知りつつも反応してしまう。 「こ……陛下! 誓って、私は疚しい気持ちからミアを引き取ったのではありません」  エイドリアンは追撃の手を緩めるつもりはなさそうだ。 「……それでは、養女にでもするつもり?」  ニコラの様子が煮え切らないのを、形良く整えられた片方の眉を上げて見上げる。 「……養女とはまた違うような……」  ニコラは未だにミアの立ち位置を決められずにいた。  しきりに首を捻るニコラをエイドリアンは面白そうに眺める。 「君は真面目だね、ニコラ・モーウェル騎士」 「騎士には女性を守る義務がございますので」  ニコラは幾分崩れていた姿勢を背筋を伸ばして整え、騎士としての立ち姿に戻る。
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