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「王子といえど、御自分で何でもできるに越したことがありません。私がしゃしゃり出て、メイドや教師の仕事を奪うのもどうかと思いますが?」
「王子達には容赦がないね」
「陛下も私が王子たちにそう接するのを望んでの抜擢だったのでは?」
「それはそうだけれど、私にまで冷たくするのかい?」
エイドリアンは口をとがらせてすねたように言う。
まだまだ見た目は若いが、壮年の王のする表情にしては幼い。
「女性や子どもに親切にするのは、騎士としてあたりまえのことですので」
ぴしゃりと言い切れば、エイドリアンはやれやれと首をすくめる。
「まぁ、そういう所が女性に人気なのかもしれないね」
エイドリアンは、思い出したように冷めてしまったお茶を一口すする。
「実はね、騎士団のメイドとして働きたいという貴族の娘さんがいてね。私としては別に構わないのだけれど、どうやら結婚したい相手が団にいるらしいんだ」
散々ふざけていたエイドリアンはそれまでの気安さを引っ込めて、王としての顔で話し始めた。
このような時は、もうニコラには選択肢が残されていないことが多い。 ニコラは警戒して眉をひそめた。
「つまり、モーウェル騎士のお嫁さん狙い、という事さ。 モーウェル家とアディアール家、両方と縁が結べるなんて、君はなんてお得な相手なんだろうね」
あっさりとニコラに手の内を話したエイドリアンは、どうやら話に出てくる貴族の娘に同情的ではないようだ。
「私はその方と結婚するつもりがございません」
「そんな固いことを言っていると、ロイ君に先を越されるよ」
ロイの名前が出てきて、ニコラの機嫌はみるみる下がった。
「身分の高いメイドが騎士団にいるとなると、皆、働き辛くなるだろう? それに、ちょっと断りづらくてね」
エイドリアンが、決定事項としてミアを連れてくる話をしているのだと気が付いたが、ニコラはミアを城に連れてくることに抵抗があった。
「ですが、だからといって……」
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