ニコラ様のお役に立ちたいのです

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 ありとあらゆる姫と騎士の書物を取り寄せては、読み耽り涙を流したりもした。  数年後、ニコラは僥倖に巡り合う。  初恋の亡き姫が、密かに恋人と通じてこっそり産み落とした赤子の行方が知れたのだ。  年齢からすれば、王位継承権の上位にいたはずの姫。  ニコラは恋に狂った。恋というよりも「姫」という存在に舞い上がったのだ。    ニコラの執心を余所に、肝心の姫の娘は人の美醜にも関心のないような粗野な娘に育っていた。  ニコラが姫としつこく呼び続ける娘、タリムは、今、ギルドで剣を振るって生活をしている。  城に戻る気はさらさらない。その上、ニコラのことを嫌っている。  手酷く袖にされたのは悲しい思い出だが、それでもやっと姫を見つけてニコラは幸せだった。  ニコラの春はこれからだったのに。  これから先、何度断られようが、追いかけて姫に仕えようという意欲に満ちあふれていた矢先、事故が起きた。  花街の規則を知らずに、水揚げ前の娼婦を、花街の外に連れ去ってしまったのだ。  魔が差した、とでも言えば良いのだろうか。不運だと言い切るにはあまりにもニコラは衝動的だった。    ニコラは大金を叩いて――借金までこさえて――娘を買い取ることになった。  ミアは痩せて見た目が幼かったから、ニコラは違法に子どもが働かされているのだと早合点した。  ミアの任期分を買い取った時でさえ、孤児を保護したくらいの気持ちでいた。  だからミアが成人していると判明して、自分がしてしまったことが重くのしかかる様になっていった。 「そうであった……私は、成人している娼婦を囲ってしまったのだ……」  ニコラは、ベッドから離れて、椅子に腰掛けて頭をかかえた。  ニコラにとって、騎士である身で乙女を金銭でどうにかしてしまった事は耐え難いことであった。 「何を初心(うぶ)なことを仰っているのですか。あの時、買い取って頂かなくてもいいとわたしは申し上げましたのに」  しかし買い取らなければ、違反を犯すことになったミアの娼館での扱われ方は、ずっと過酷なものになっていただろう。 「それとこれとは全然話が違うだろう」  ニコラが頭を掻きまわすのを、ミアはもう見飽きたような顔をして見ている。 「ニコラ様、ニコラ様が買ったのは娼婦で間違いありません。もうそろそろ、現実に目を向けてください」
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