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「お前、新聞社に就職するんだよな? スポーツ担当になれるのか?」
「希望は出してる。野球担当になれたら最高だよな」
写真の学校からの就職先として、新聞社や出版社は代表的だ。
カメラマンと聞いてテレビ的なものを想像する人も多いかもしれないが、健太が専攻しているのは動画ではなく写真なので、友人も同じ分野である。
「さっきから黙ってるけど、何見てるんだ?」
四人のうち一人がずっとスマホを見ていて、そいつに声がかかる。
四人いて四人ともスマホを見ていることも珍しくないのだが、少数派になるとこうして突っ込まれることが多い。
「球団公式の、キャンプの動画だよ。いや、今年はマジでいけそうなんだよ」
「阪神っていつもそんな感じじゃね? どうせ強いのはオープン戦までだろ」
「ここ最近は、オープン戦で勝てないほうがシーズンの成績はいいんだよな。なんとも複雑だよ」
ひとり熱狂的な阪神ファンがいて、こいつの場合、野球を見るよりこいつの動きを見ているほうがおもしろいと、健太は思っている。
シーズンが始まると常に勝敗に一喜一憂していて、毎日が楽しそうだ。
「それ、SNS?」
「そう。健太も見るか?」
たまたま隣に座っていたから、横目でそいつのスマホを見ることができた。
健太が使っている写真投稿に特化したものではないが、健太も使っているアプリだった。
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