第1話 武者修行

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 今日の舞がしでかした最大のミスは、オーブンで生地を焦がしてしまったことだ。  普段通りに進めていたはずなのに、今日はなぜか失敗してしまった。  これっきりでオーブン担当を下ろされるという事態は避けられたけど、先輩たちから大目玉を受けた。  操作ミスがあったんじゃないかとか、中をよく見てなかったからだとか、いろいろな指摘を受けたが、どれも心当たりがない。  生地の状態が変わっていく様子をいつも通り楽しく見届けていたはずなのに、終了間際で急に焦げ付いてしまったのだ。  仕事を終えたあと、先輩のひとりに「食材は生き物だから、いつも同じように仕上がるとは限らないんだよ」と言われた。  その先輩も今日の舞と同じようなミスをしたことがあるようで、そのときに当時の先輩から言われた言葉らしい。  先輩は笑顔を見せて優しい口調で言ってくれたから、その場では素直に「ありがとうございます」と返したけれど、もしもそれが本当なら、次以降はどう注意すればいいのだろう。  あまりにも強い不確定要素に、舞は明日以降が不安でしかたなかった。  そんなことを思いつつ、舞はできあがったパスタをお皿に盛り付けて食卓へと運んだ。  たとえ一人の食事でも、きちんと手を合わせて「いただきます」は言う。
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