それから

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「明日はママのピアノが聴けるぞ。楽しみだな」 彼は足元にやってきた聡馬の頭を撫でながら、言った。 「うん、僕、ママがピアノ弾いてるの、大好き」 「ちゃんとおとなしくしてるんだぞ」 「うん」 2人はとても楽しそうに顔を見合わせてうなずきあった。 「まーくん、ごはん、おかわりは?」 私は立ちあがろうと椅子をずらした。 「だから、さっちゃんは座ってろって」 彼は少し怒った顔をした。 「パパ、怒ってる?パパ、ママとけんか?」 聡馬がそんなことを言ったので、私達は顔を見合わせて笑った。 「これはけんかじゃないの」 「そうだよ、けんかなんかしないよ。パパは昔っからママが大好きなんだから」 彼は聡馬を抱き上げた。 「そうよ、パパはママが困ったときには必ず助けに来てくれる、ママだけのヒーローなんだから」 私は聡馬の頭を撫でた。 あの日、幼い2人が交わした約束は、今でも続いている。
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