つくしの思い出 

1/1
前へ
/57ページ
次へ

つくしの思い出 

「いつか、さっちゃんが困ることがあったら、今度は僕が助けるから。必ず助けに行くから」 あの時、彼はそう言った。 私がまだ幼かったころのことだ。 詳しいことは覚えていない。 私が思い出せるのは、彼を「まーくん」と呼んでいたことと、彼がつくしを欲しがっていたことだけだ。 何故、彼がつくしを欲しがっていたのかはわからないが、必死につくしを探す彼のために、私も一緒になってつくしを探した。 そして、夕方になって、私が摘み取った分のつくしを彼に差し出した時、彼はそれを受け取り、あの言葉を言ったのだ。 「いつかさっちゃんが困ることがあったら、今度は僕が助けるから。必ず助けに行くから」と。 それは、遠い昔の淡い思い出。 幼い2人が小さな小指で結んだ、忘れられない、つくしの約束。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加