5 覆面作家の交流会(1)

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       § § §  エランの店は、今日もアルドスの著作を求める者でにぎわっている。  ただ、その数は以前よりは減っている。  店の奥でそのことを裏付ける資料をにらながら、エランは顔をしかめていた。 「そろそろ次の新刊が欲しいんだがなあ」  すっかり縁を切った実家にいた甥テスカードが訪ねてきたときは仰天したものだが、彼が原稿の束を出したときにはさらに驚いた。  一読して甥がこの傑作を書いたのかとまた驚き、違うと冷ややかに否定されて首をひねり、原稿料は不要と言われて小躍りした。  見込みどおり『皇帝と竜王の年代記』はあっというまに評判となり、第二巻も前作にも増して好評だ。  とはいえ、頭打ちは見えつつある。  ここは第三巻の発売で勢いづけたいところだが、テスカードから連絡はない。  いまだに著者だと認めないほど(かたく)なな甥だ。  機嫌を損ねようものならものならあっさり移籍されそうで、催促もできない。 「テスカちゃん、怖いんだよねえ……」  顔をしかめて短い顎髭を撫でたところへ、店員が飛びこんできた。 「エランさま、なんだかすごいお客が!」  エランは店に出た。  店員が誰のことを言ったのかはすぐにわかった。 「──店主の方ですか」
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