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5 覆面作家の交流会(1)
ロアは表情を曇らせて店のカウンターにいた。
仕事がまったく手につかない。
(あれは間違いなく『永遠の想い』……)
アルドスに贈ったはずの古い恋詩集がテスカードの机にあったことが、ずっとロアを悩ませている。
ほんの一瞬だけ、騎士団長が覆面作家かもしれないという期待がよぎった。
だが、声がまるで違うという事実から目を背けるわけにはいかなかった。
(そのほうが都合がいいからって、そう思いこみたいだけ)
あの本はロアが勝手に送りつけたもので、当然ながらアルドスから注文されたわけではない。
覆面作家の本名を知らない以上、はっきり宛名も書けなかった。
それがことごとく悪いほうに出てしまったかもしれないという不安がどんどん大きくなっていく。
(もしかしたらテスカード団長に、アルドス先生が誤送本を着服したって思われて……)
リッテム商会を強請った部下を、未遂だったにもかかわらず放逐処分にするほど厳しい騎士団長のことだ。
宛先不明瞭な本を部下が着服したと考えれば、それなりの処分を下すのではないだろうか。
(正体を明かせるのなら、最初から覆面作家にはならないだろうし)
状況はアルドスにとってよくない方向に進んでいるものとして考えたほうがよさそうだった。
ロアはためらいながらペンを取った。
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