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伸矢は何かを考え込む。
そして、ふと頭に浮かぶ一つの情景。
「…なぁ。似てねぇか?あの時と。」
幕末の、あの時に酷く似ている。
外国に対抗する沢山の人間が、尊皇攘夷だと声を上げた。
彼らを、追い払うべき様々な組織が作られ、どさくさに紛れて沢山の部隊ができた。
国のために忠義を果たしてきた自分たちに、どういう最後が待っていたか。
利用するだけして、しまいには敵だと、徹底排除をしようとしたではないか。
今また国のために戦えと。
近藤が上に立つ部隊が作られようとしている。
(思い過ごしか…。)
淳史は笑う。
「偶然だろう。お前が生き残るなんて誰も予想してなかったんだからよ。これで沖田や永倉が来たら…、まぁ考えなくはないがな。」
その笑い声に伸矢の心は満たされていく。
自分はずっと、この人の隣を求めてきた。
(まぁ良いか。近藤さんともう一度暴れられるなら…。)
そう思って、そっと微笑んだ。
忠史はドア越しに二人のやり取りを聞いていた。
(流石、土方。といったところか。)
忠史にとって、これは賭けであった。
伸矢は確かに犯罪者である。
…が、もっと殺しても良い、死んでも良い、極悪犯罪者が沢山いる中で。
彼を選抜した理由。
ただの民間警備員だった淳史に、今の地位を与えた理由。
日本はもう一度やり直すべきだ。
現在のトップを引きずり降ろし、外国ともっと有益に関わる。
建て直さなければいけない。
(さぁ。めちゃくちゃに、掻き乱してくれ。)
忠史は部屋を背に向けると歩き出す。
その口元には、冷徹な笑みが浮かんでいた。
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