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ある日、突然。
高尾太夫は殺された。
それは自分を身請けしたはずの男の犯行だった。
その無念たるや否や。
そうして、高尾太夫は転生してからも愛を求め続けた。
気付けば牢獄の中。
真衣は現世において欲しい物を手当たり次第貪った。
自由に浮かれ、男たちに頼めば何でも叶う。
あれが欲しい。
あれが食べたい。
あれが気に入らない。
あれはいらない。
欲しいものは手元に。
いらないものはいらない。
男たちは彼女のために、ひとつ。またひとつと罪を重ねていく。
真衣を取り巻く人間が何人。
いや、何十人と命を落とした。
(あたしは悪くない。また籠の中に閉じ込められるのは絶対に嫌よ。何人殺したとしても。あたしは…羽が欲しいの。)
真衣は胸元のはだけた着物の裾をひるがえし、森へと歩みを進める。
欲しいものは欲しい。
それだけのために、戦う。
同じ頃。
堂本咲は、森の中に身を隠して様子を伺っていた。
咲は今回の『パラダイス』計画に憤慨している。
(これは正義からほど遠い悪しき愚業だ。私が正しい道へと導かねばならない。)
前世…『ジャンヌダルク』
コードネーム…『オルレアンの乙女』
彼女はフランスの危機を救った国民的ヒロインだ。
軍を率いてオルレアンを解放したジャンヌ。
その姿の勇敢さ、正義への情熱。
彼女はフランスにとって英雄であったはずなのに…。
ジャンヌが口にした言葉が、その人生を大きく狂わせる。
これは、神からのお告げである。と。
当時の時代の風潮は、魔女裁判が盛んに行われていた。
彼女の神がかった強さ、民衆を惹き付けて止まないカリスマ性。
フランスにとって、徐々に不安の種を育てていくことになる。
それは、恐れ。
ジャンヌはフランスの脅威となりつつあった。
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