〈3〉

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ある日、突然。 高尾太夫は殺された。 それは自分を身請けしたはずの男の犯行だった。 その無念たるや否や。 そうして、高尾太夫は転生してからも愛を求め続けた。 気付けば牢獄の中。 真衣は現世において欲しい物を手当たり次第貪った。 自由に浮かれ、男たちに頼めば何でも叶う。 あれが欲しい。 あれが食べたい。 あれが気に入らない。 あれはいらない。 欲しいものは手元に。 いらないものはいらない。 男たちは彼女のために、ひとつ。またひとつと罪を重ねていく。 真衣を取り巻く人間が何人。 いや、何十人と命を落とした。 (あたしは悪くない。また籠の中に閉じ込められるのは絶対に嫌よ。何人殺したとしても。あたしは…羽が欲しいの。) 真衣は胸元のはだけた着物の裾をひるがえし、森へと歩みを進める。 欲しいものは欲しい。 それだけのために、戦う。 同じ頃。 堂本咲は、森の中に身を隠して様子を伺っていた。 咲は今回の『パラダイス』計画に憤慨している。 (これは正義からほど遠い悪しき愚業だ。私が正しい道へと導かねばならない。) 前世…『ジャンヌダルク』 コードネーム…『オルレアンの乙女』 彼女はフランスの危機を救った国民的ヒロインだ。 軍を率いてオルレアンを解放したジャンヌ。 その姿の勇敢さ、正義への情熱。 彼女はフランスにとって英雄であったはずなのに…。 ジャンヌが口にした言葉が、その人生を大きく狂わせる。 これは、神からのお告げである。と。 当時の時代の風潮は、魔女裁判が盛んに行われていた。 彼女の神がかった強さ、民衆を惹き付けて止まないカリスマ性。 フランスにとって、徐々に不安の種を育てていくことになる。 それは、恐れ。 ジャンヌはフランスの脅威となりつつあった。
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