〈戦い・1〉

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〈戦い・1〉

森の中で二人の女が対峙する。 突然目の前に現れた男装姿の女に、真衣は舌打ちをする。 (さっそくだわ。) 咲は真衣の姿を一瞥すると湧き出す嫌悪感に表情が歪む。 上品な着物を胸まではだけさせ、素肌を存分にさらしている。 (汚らわしい女め。) その視線をかわしつつ、真衣は注意深く観察する。 同じく咲も瞬時に目を走らせる。 二人が確認したいものは同じ。 このパラダイス計画では参加者たちは他人の持つスキルが何かを知らない。 与えられた情報は前世の名前のみ。 よって、この自由な服装というのは両局面での意味を持つ。 当人側としては、衣装に忍ばせた道具を悟らせないで済む。 何かを媒介とする者にとっては、それを知られることでスキルへのヒントを与えかねない。 スキルは自分が有利にたつためにもギリギリまで知られたくない。 相手側としては、その服装自体が情報になり得る。 服装は前世を連想させるものが多い。そこから推測させるスキル。 場合によって、そのスキルを発動させるのに都合が良い作りになっていることもあるのだ。 両者ともに睨み合い。 タイミングを伺う。 先に動いた方が有利か、はたまた不利となるか。 咲は尋ねる。 「お前はこの計画に何を求めている?」 意見次第では、あるいは人数が減るまでの間、共闘もありか。 そう考える。が。 「自由以外に何があるの?」 真衣にしてみれば愚問中の愚問。 (やはり…。決裂だな。) 咲はふっと笑う。 真衣の神経が張り詰める。 (所詮は低俗な者か。私の崇高な目的とは天と地ほどの差だ。) 咲の手が背中にまわる。 (媒介。道具を使うタイプか。あたしと同じ。) 真衣も胸元に手を伸ばす。 互いに獲物を取り出そうとした矢先。 突然二人の間に男が入り込む。
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