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大型の薙刀を何の苦もなく振り回す。
その刃が狙ったのは…。
咲だった。
(手を組んだか。)
すんでのところで身をかわす。
男は尚も咲を狙い、薙刀を振り下ろす。
その目に光は見られない。
咲は攻撃をかわしながら冷静に分析をする。
(こいつ。召喚されているものだ。私と同じか…。ならば本体が側にいるはずだ。)
真衣は何が起きたのか理解できずにいた。
ただ、これだけはわかる。
(あたしを守ってる?)
そして素早く視線を巡らせる。
それを見ていた咲。
(あの様子だと…。あの女にも想定外の事のようだな。いずれにしても、このままだと分が悪い。一度引くか。)
本体が見つけられない以上、咲もスキル発動は出来ない。
このままニ対一になるのは避けたかった。
幸い、男の薙刀のリーチは長い。
しかも力に任せて精密なコントロールがされていない。
これなら難しく考えなくても、刃をかわすだけで良い。
咲は前を向いたまま後ろにジリジリと下がる。
応戦してるかのように振る舞い、本体を探す。
同時に森へと逃げ込むチャンスも狙う。
(駄目だ。本体が見つからない。撤収するか。)
刃を避けながら、そのまま体をひるがえすと、木々の間に体を滑り込ませる。
「逃げるわ!」
真衣が気付き、叫んだ時にはすでに遅かった。
咲の姿は森の中へと消えていく。
呆然とする真衣の目の前に、男が立ちはだかる。
(しまった。気を抜いた!)
真衣は後ろへ下がると体勢を整える。
しかし、戦うにしてもこれは召喚されたものだろう。
それには気付いたが、本体はいまだ見つけられていなかった。
(せめて近くにいればスキルは使えるんだけど。一か八か…。)
真衣は道具を取り出す。
その時。
「やっと、会えたね。」
木の陰から現れた男。
それは。
真衣の知らない男だった。
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