5人が本棚に入れています
本棚に追加
〈戦い・3〉
咲が森を出ると一面に海が広がった。
(ここならスキルの発動に最適だ。)
障害物のない開けた場所は、咲のスキルと相性が良い。
少し歩いて辺りを伺う。
すると、一人の女の姿が見えた。
洋装のドレスに沢山のフリルと宝石が飾り立てられている。
その女は、豪華さとは見合わぬほどに幼い出で立ちであった。
夢中で砂に何かを描いている。
(どうせここにいる奴らは全員クズだ。私の崇高な思想と目的など分かり会えない。)
咲はそっと背中に手を回し女に近付く。
「ねぇ。この絵、何だと思う?」
顔もあげず、いまだ作業を続けながら問いかける。
その女、理央は咲の接近に気が付いていた。
しかし遊ぶことはやめない。
咲の神経が一瞬にして昂ぶる。
この女は自分を確認することなく声をかけてきた。
ふと目に入る砂の絵。
それは懐かしいフランス国旗だった。
そして、その隣には。
ギロチンの絵。
(こいつ。マリーアントワネットか。)
「ギロチンってさ、一瞬で死ぬのかと思ってたの。でもね、少しだけまだ見えて考えられるんだよ。不思議だよねー。で、そのときに思ったんだ。何で殺されたんだろう?って。」
理央は絵を書き続ける。
話も続く。
「私はただ楽しく遊んでるだけなのに。いつもみんなが責めるの。変なの。
あ、そうだ!私さ、この計画の裏技知ってるよ。殺し合わなくても、みんなでパラダイスに行ける方法。」
咲の頭が混乱しだす。
理央の話は脈絡もなく変化していくのだ。
「ねぇ。一緒に遊ぼうよ。パラダイスって凄いワクワクするよね!行きたいんだぁ、私。」
最初のコメントを投稿しよう!