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〈戦い・4〉
「義経様…。」
亮は突然現れた女の姿を、まじまじと見つめる。
「まさか…。しず?しずなのか?」
あかりは静かに頷く。
「やっと君に会えた!何度転生したことか!!」
亮はあかりに抱き付く。
あかりはその手をそっと回し、胸の中に顔を埋めた。
「…本当です。私もあなたをずっと探していました。ずっと…。」
体を離し、上目で亮を見つめるあかり。
その瞳には恨めしさの色が浮かぶ。
「なのに。あなたは酷い人。」
そう言って視線を流す、その先には真衣の遺体。
亮は、あぁ。と納得をする。
「しず。ここでは命がけだよ?敵と遭遇すれば、そりゃ殺られる前に殺るしかないだろ?」
「違います。あなたは彼女を抱き締めた。私を抱き締めたように…。別の女をその腕に寄せたのです。」
(参ったなぁ。見られていたのか。それにしても相変わらず嫉妬深いなぁ、しずは。愛されてる証拠だけど、これは相当怒ってるぞ。)
どうしたら彼女の機嫌を直せるだろうか。
「あれはさ、僕なりの弔いなんだよ。彼女への敬意を払ったまでさ。」
あかりの表情は依然、変わらない。
「義経様は最後、私を捨てました。また捨てるのですね。そして結局は別の人を隣に置く。本当に酷い人。…そして、愛しい人。」
「君を捨てるなんてとんでもない。あの時だって捨てたわけじゃない。」
「私は。私を愛してくれる人じゃないなら、いらない。私はこんなに愛してるというのに。その愛はいつだって丸々ひとつとして返ってこない。あなたなら、今度こそ私だけを愛してくれると信じていたのに。」
あかりの被害妄想は止まらない。
彼女は自分を悲劇のヒロインに仕立て上げる事を、まるで呼吸をするように自然とやってのける。
「あなたを愛しています。深く、誰よりも…。」
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