〈戦い・4〉

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「流石、お見通しか。君がしずならわかるよね。僕がどれほどまでに愛が深い人間かを…。しず。愛する人を一生自分のものにしたかったら、どうするべきだと思う?」 亮がもう一度笛を吹くと、再び弁慶が現れた。 亮は続ける。 「殺してしまえば良いんだよ。それが究極の愛だ。しずと僕は良く似ているよ。愛せば愛すほどに殺したいと想う。僕らはいつだって戦に邪魔をされる。もう二度と離れぬように、君をここで殺そう。」 「あぁ。嬉しい。義経様はそこまで私を想ってくれている。」 あかりの感情が昂ぶる。 彼女の死の舞が始まろうとしていた。 亮はこの舞が、あかりはこの笛の音が、お互いのスキル発動のトリガーだと予測している。 互いを知り尽くしているがゆえの警戒。 義経の笛。 静御前の舞。 その隣には弁慶の姿。 それは二人にとって酷く懐かしく、ずっと求めていた光景。 (でもね、義経様。) あかりは手に持っていた小石をピンと弾く。 その小石は亮の笛へと当たり、手元を狂わせた。 その一瞬の差。 あかりの舞が亮を捕える。 その愛が深ければ深いほどに、体を蝕む猛毒となる。 あかりは、絶命した亮の傍らにそっと腰掛ける。 そして、髪を結っていた紐を外すと、互いの手首にきつく絡み付ける。 「私は、二度と離れぬように。ずっとあなたと一緒に死にたかったんです。あの時から、ずっと。それが私の愛の形。」 繋がれた二つの手。 この手がもう二度と離れぬように。 そして、森の影へと声をかける。 「見ていたのでしょう?さぁ、殺しなさい。私の願いはもう叶ってるの。」 不意に呼吸が止まる。 あかりのお腹に空いた穴は、静かにその命の灯火を吹き消した。 男は独りごちる。 「ふん。胸糞悪い喜劇だったが…。俺は変わり者は嫌いじゃないんでな。せめて形はのこしてやったが、気まぐれだ。運が良かったな。」 そして再び森の中へと消えて行く。 残された二つの遺体。 それはまるで眠っているかのように。 仲睦まじく、そっと寄り添いあっていた。 勝者…本田あかり 勝者…力堂保
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