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血にまみれたマリア。
聖母が聞いて呆れる。
連行されるとき、彼女は言った。
「牢獄でも妊娠できるよね?」
あの時の桜の笑みが、当時の刑事の脳裏に今なおこびりついて払拭できずにいる。
今桜が望むのはパラダイスへの希望。
そこへ行けばきっと息子と巡り会える。
「私は神の子を産んだの。何をしても許されるべきだわ。」
誰に聞かれるわけでもなく、一人呟くと、桜は海岸へと歩みを進めた。
工藤仁は物思いにふけっていた。
(あぁ。いけない。こんな所で物語を紡いでいる場合じゃない。)
今、仁の目の前には寄り添う男女の遺体。
彼はそれを見て、ここで何があったのかを『作って』いた。
前世…『シェイクスピア』
コードネーム…『天才劇作家』
イングランドに産まれ、ルネサンスの演劇において数々の名作を生み出した男。
彼の着眼点は、まさに天才。
その優れた観察力をもって、精巧に描かれる人間の心理描写は圧巻である。
シェイクスピアといえば、『ロミオとジュリエット』といった誰もが知る作品がある。
しかし彼を有名に至らせたのは四大悲劇である『オセロー』『ハムレット』『リア王』『マクベス』だ。
これらは人生をテーマとした作品で、彼の深い洞察力が良く現れている。
なぜそんなにも心に残る悲劇を生み出せたのか。
彼の人生は苦もなく平和な日々。
裕福な家庭に育ち、自らが成功者となり、人生を駆け抜けた。
産まれてから死ぬまでずっと、ジェントルマン。
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