〈戦い・8〉

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彼らの能力はいたってシンプル。 己の肉体を使い戦うのみだ。 先に攻撃を仕掛けたのは保。 全力の拳が飛んでくる。 刀で何とか受け止め、その流れで斬り返す。 急所を狙ったつもりだったが、斬れたのは腕。 しかし。 (ガードされたか。しかし硬いな。大した傷になってねぇ。パワーだけの強化じゃないって事か。ただ、スキルは有効ってとこだな。) すかさず右から回し蹴り。 反対に体をひねるが、今度は左から蹴り込まれる。 紙一重で鞘を使い受けると、腹に強烈な一撃が響く。 瞬時に茨が腹部を守ったが、その衝撃はしっかりと届いている。 生身で受ければ穴が空くでは済まない。 伸矢は息を整える。 保は血が滴り落ちる拳を見て高らかに笑う。 「はは!何だよ。お前。楽しいじゃねぇか!!」 「俺は楽しくねぇよ。」 ケホケホとむせ込み、唾を吐く。 「つくづく合わねぇなぁ。」 そう軽口を言いながらも手は止まらない。 受けの一方になっている伸矢の額に滲み出る汗。 (防戦一方じゃ勝てない。どうにか攻撃に回らねぇと。) まるでマシンガンのように、拳から繰り出される打撃。 それを刀と鞘を使い受け流す。 スパートの最後の一撃は全力の蹴り。 それは伸矢の腹に入り、ミシリと嫌な音を立てた。 (あばらがいったな…。) 精神を集中させ、茨で骨の周辺の補強していく。 刀を構え直し上段のフェイント。 後ろに回り込み、背中の中心、心臓部を狙い深く突く。 が、刃先は入ったものの、筋肉により止められてしまう。 保は肉体の強度を更に上げていく。 スキルの時間切れが迫っている。 (あと数分か。) 刺さった刀を奪おうと体を大きく動かすが、茨の棘によって肉片を抉られただけである。 体から抜けた刀が首をめがけて振り下ろされる。 保はそれを大きく避けると、踏み込んで体当たりを決める。 伸矢はその威力を後ろ足で耐えつつ、刀を振ると鞭のように伸びでた茨が保の首を捕らえた。 保は力を入れ弾き切る。 「お前、前世は何だ?」 「…土方だよ。」 「新選組か。どおりで。お前らの敗因は何だったかわかるか?」
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