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〈終幕〉
「本当に私のスキルはいらないか?」
「あぁ。いらない。むしろ、無い方が良い。」
伸矢は戻りつつある意識で男たちの声を耳にする。
うっすらと見えてくる、白い光。
まだ鮮明ではない思考の中、徐々に蘇る記憶。
(そうか。俺が勝ったんだな…。)
男たちの声はまだ届く。
「君がそう言うなら、きっとそうなのだろうが。一応根拠を聞かせてくれ。」
「そうだな。まずあいつの最大の武器はスキルよりも頭脳にある事が一つ。思考することが大事なんだ。あなたのスキルを受けることで本来の力を軽減させてしまうのは勿体ない。まぁ、一番の理由は。あいつの上に俺が立つから…だ。」
「…確かに。本当、都合の良い巡り合わせだよ。まさか、彼が生き残るとは。でも、君にとっては嬉しい限りだな。
新選組局長、近藤勇…。いや、今は軍事管理長官、佐久間淳史君。」
その言葉に伸矢の胸が波打つ。
(近藤…さん…?)
痛む体に鞭を打ち、何とか起き上がる。
その気配に気付く二人の男。
その内の一人と目が合う。
「おっ、とし!久しぶりだな。」
伸矢の目から自然と涙が流れ出る。
「近藤さん…。」
ずっと会いたかった人。
まさか、こんな形で再会を果たせるとは。
「ね?本間さん。納得できるでしょう?」
忠史はひとつ頷くと答える。
「そのようだな。では、君から説明してもらうのが良いだろう。私は藤森のところに戻る。あのお偉いさんたちにも報告しなきゃならんのでな。」
そう言って部屋から出ていく。
それを見送ると、淳史は伸矢に向き合う。
「まずは、おめでとう。良くやったな。」
「近藤さん。このパラダイス計画って…。」
「あぁ。本当は極秘案件だが。お前には話しても大丈夫だろう。パラダイス計画ってのは日本の軍事力を底上げする為の前世スキル保有者のみで編成された特殊部隊を作ることを目的としている。その実験的試みとして、人を殺すことを厭わない、お前ら犯罪者が選ばれたって訳だ。」
「今になってそんな計画を立てるってことは…。海外ではとっくに導入済みって事か。相変わらず、日本はおせぇ。」
「まぁ、そう言うな。他のもんが生き残ってたら、ただ自由になれると夢だけ見させて実際は軍隊入りだったんだぜ?本人の意志とは関係なく、な。」
「そんなやり方。良く通ったな。」
「まぁな。とにかく俺たちはこれから特殊部隊として組むことになる。俺はお前の上官だ。今後また訳ありの新たなスキル保有者たちが入隊してくるだろう。組織として実働しだしたらお前の役目だぞ、とし。」
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