〈序幕〉

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〈序幕〉

2XXX年 世界各地で突如産まれた『特殊能力保有者(とくしゅのうりょくほゆうしゃ)』。 それは、あまりに突発的で。 あまりに現実離れした現象であった。 ー前世記憶保持者(ぜんせきおくほじしゃ)ー その名の通り、前世を記憶されたままに産まれた者たち。 これは極めて稀であり、大抵の場合が著名な人物であることが特徴だ。 そこまでは、まぁ良い。 問題となったのは、この者たちが備え持つ『特殊能力(とくしゅのうりょく)』。 すなわち『前世(ぜんせ)スキル』であった。 その対応は国によって様々。 ある国は一斉摘発、ある国は完全放置。 日本はこの能力者が発生した第一号国であった。 その為どの国よりも一足先に対応に迫られて今に至る。 現在日本では三種類のカテゴリーに分類されている。 『有益使用者(ゆうえきしようしゃ)』…スキルを正しく使用する者 『無害非常者(むがいひじょうしゃ)』…スキルを発動させない者 『悪用犯罪者(あくようはんざいしゃ)』…スキルを悪事に使用する者 それぞれ、黄色・青色・赤色で色分けされた特殊なリングを成人の際に、手首に取り付けられる。 例えば青色(無害使用者)がスキルを発動した場合。又は黄色(有益使用者)がその力を悪用した場合。 これらは即刻、赤色(悪用犯罪者)に格付けされるシステムだ。 では、この赤色リング者たちはどうなるのか。 我が国では新たに『前世スキル管理法(かんりほう)』という法律が設置されている。 これを犯した者は『前世悪用罪(ぜんせあくようざい)』に相当し『前世記憶保持者専用収容所(ぜんせきおくほじしゃせんようしゅうようじょ)』へと送還される。 そこでは能力を一切使用できない牢に入れられ、何百年という、実質終身刑に値する期間を過ごすこととなる。 では、なぜこの法律が出来たのか。 それは忌まわしき最初の発生者が大きく関わっていた。 世界でも最初の能力者。 今では知らぬものはいない、歴史を塗り替えた事件。 ーT・S事件(大蔵・斎藤事件)ー 斎藤大蔵(さいとうたいぞう) 前世…『リンカーン』 コードネーム…『国民(こくみん)の父』 前世スキル…『人民(じんみん)人民(じんみん)による人民(じんみん)のための…』 能力…自分の演説を聞かせることで100%の洗脳を可能とする。その範囲は声が届くまでとし、定期的に行わなければならない。 能力に気付いた大蔵は、スキルを使い大規模なカルト教団を立ち上げた。 この力は強大であり、洗脳された者たちは言われるがままに行動を起こす。
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