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「さて」
ガタリと向かいから椅子を立つ音が響く。
「俺、もう少し西瓜貰うよ」
屈指無く笑う顔はそのままだが、こちらを見下ろす眼差しは少し高く遠くなった。
「香珊は?」
もう「カオリ」とは呼ばれないことにホッとすると同時に胸の奥が少し熱くなる。
「私は西瓜は大丈夫」
まだ随分余っている。
でも凸凹に磨り減らされた緋色の果肉。
「でも、もう少しお茶は欲しいかな」
まだ彼と話したい。
「じゃ、今度は菊花茶にしようか」
「ありがとう」
鉄観音の二番煎じを予想していたのと、私は好きでもこのお宅でごちそうになったことはないお茶なのとで二重に驚く。
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