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「これは良い香りだね」
透き通った黄金色のお茶からパアッと広がる、幽かに苦みを含んだ菊花の香り。
「だから買ってきた」
新たに切ってきた西瓜を齧りながら進は笑う。
「向こうの世界だと、君はヴァイオリンを習ってコーヒーばかり」
彼の笑顔が寂しくなった。
元の世界の私は今、ここにいるのに。
「でも、たまに向こうの世界でもあちこちに売ってる烏龍茶やジャスミン茶は買って呑んでたかな。あちらでは茉莉花茶をジャスミン茶とかジャスミンティーとかいうのさ」
「そうなの」
楽しそうに話す進を観ていると、向こうの世界で二ヶ月一緒にいた「カオリ」の方が私より彼にとって親しい存在に思えて胸の奥がちょっぴり痛い。
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