青梅竹馬《おさななじみ》

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***** 「じゃ、ちょっとテレビでも観てて」  白檀の匂いが次第に強まる進の家の廊下。  西瓜を抱えて台所に向かいつつ彼は居間の電視(でんし)を示した。 「テレビ?」  口に出してから、そういえばこれは英語で“television”だったと思い当たる。  だが、英語でそのまま略せば確か“TV《ティーヴィー》”で“テレビ”などという変に間延びした呼び方は初めて聞いた。 「ああ」  坊主頭の進は“またしくじった”という感じの苦い顔つきで付け加えた。 「電視だったな」  こちらの言葉を待たずに紺地の長袍の背中が台所に消える。
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