青梅竹馬《おさななじみ》

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「俺、君らが話しているところ、見掛けたんだよ」  それは私と俊甫ではなくカオリとシュンスケのことだ。  そうとは知りつつ何故かぎくりとする。 「向こうの世界で二月経ってようやく慣れてきた、もしかすると俺の記憶違いで昔からあの世界の『ススム』だったのかもしれないと思い始めた矢先だった」  俊甫から「異世界東亞来訪記」の電影を観に誘われたのは、今から半月前、進が行方不明になって一月半を経た頃だ。  おじさんおばさんと私は必死で探したけれど、彼の消息は全く掴めなかった。  おじさんも疲弊の色が見えたが、おばさんに至っては急速に髪に白い物が増え、一月で十歳以上も老けたようになった。  周りの皆は知っていて敢えて進の名を口にしないような、互いに彼のことを言い出さないよう目配せする風な薄暗い空気になった。  皆、もう彼はこの世にいないと諦めていたのだ。  それまで行方知れずになった子供の殆どは生きて還れなかった。  進もそのような一人なのだと。
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