青梅竹馬《おさななじみ》

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「ねえ」  私は食べ掛けの西瓜と飲み掛けの鉄観音を見下ろしたまま手にした銀の勺子(しゃくし)の柄を握り締める。 「進はこの二ヶ月の間……」  ひやりとした金属の柄がたちまち食い込んだ私の掌から熱を奪って固いまま温かくなる。 「俺、頭のおかしい奴に見えるよな」  毬栗頭の相手がまるで他人事のようにきっぱりと断じた。 「辮髪を切った以外にもさ」  まだ十七歳で白髪も皺も無いのに妙に老けて疲れた笑いが彼の顔を通り過ぎる。 「俺はこの二月の間、そういう所にいたんだ」  カチャリと銀の勺子が皿に落ちる音が響く。私ではなく進が自分の勺子を置いたのだ。皿には西瓜の赤い果肉が半分以上も残っているというのに。 「信じてもらえるか分からないけど」  相手は大きな目を伏せて語る。そうすると、叱られた子供じみた幼さが浮かび上がった。  白檀の香りがふと鼻先を通り過ぎる。部屋全体を満たしていてもう意識していなかったのに、こんな風にある瞬間、蘇るのだ。
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