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「目が覚めるとビョウインにいた」
口にしてから進はまた気が付いた風に言葉を継ぐ。
「そこでは醫院を『病気』の『病』に『院』を付けて『病院』と言うのさ。『醫院』でも通じなくはないけどね」
再び取り上げた茶器に口を着けると砂でも噛んだように苦い顔になった。
「とにかく、そこは言葉から何から全部、風変わりだったんだ。男は誰も辮髪にしてないし、女でも髪を短くしている人もいるし、服も皆、洋装だし」
どこか確かめる風に毬栗頭の額に手を当てる。
その手が傷もなく荒れていないことにこちらは僅かに安堵した。
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