7 御術師総庁に侵入せよ

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 二人が戻ってくるのを待つ間、潤と総代は、中央通路のベンチに座っていることになっている。  鴉隊詰所から見える場所だった。通り掛かる人が、よくこっちをチラ見して通り過ぎていく。 「あ、また見て来た」 「仕方ないですね。私と仁神君じゃ、業界の珍獣みたいなもんですよ」  そう言われると、潤はちょっと不満だ。  見た目だけなら、俺は普通だ。全身を覆って狐面をいつもつけてる総代のが、よっぽど目立つ。  てか、総代って、夏どうするつもりなんだろ。我慢?  ちょっと前まであんなに寒かったのに、今日は風も無くて、この時期にしては暖かい日だった。  中央通路は桜並木になっていると、今日気付いた。ここは桜が咲いたら綺麗だろうなと、潤は思った。  総代と、今日は昼ご飯どうしようかとか、そんなどうでもいいような話をしていた時だった。 「よう」  声を掛けられた。その声は覚えてる。  潤が座ったまま見上げると、そこにいたのは宇陀川総代だ。 「これはどうも。こんにちは、宇陀川総代。今日は本部に御用ですか」  総代が立ち上がって挨拶し頭まで下げたので、潤も仕方なく立ち上がって頭を下げる。 「いいって、座ってろよ」  言いながら、宇陀川総代は辺りを見回した。 「今日はあのノッポはいねえのか」 「伊東さんなら、今お友達と会って、その方と一緒にいるんですよ」  総代が言ったのは本当の事だ。彰さんは今、ナベさんと一緒にいる。 「総代をほっぽってダチを優先するとはな。あいつは所属失格だろ、クビだ」  は? お前が言う事じゃないだろ。いきなり、何?  潤は信じられない物を見る目で宇陀川総代を見た。 「いえ別に、今何ってわけでもないので、お友達といるくらいいいんですよ」  総代だってこんな言い方、気に入るわけないのに、その場を収めようと当たり障りのないように応対している。  だから俺も、我慢しなくちゃ。  潤は奥歯を嚙み締めた。 「いいから座れよ、俺も座るからさ」  言いながら宇陀川総代は御所総代を座らせて、その隣に腰を下ろした。  え、その距離、近過ぎね?  潤は面食らった。  御所総代もそう思ったのだろう、少しよいしょと隙間を開けたら、なんとあいつは詰めて来た。  ヤバい。潤は焦る。  ところがあいつは更に、御所総代の肩に手を回してきた。  これは本当に、ヤバい。  御所総代は、動きを停止した。多分思考も停止している。  うちの総代はもう使いもんにならない。  総代は、男の人とこういう感じになるのが、何より苦手だ。  俺が何とかしなくちゃならない。けど、相手は図々しくて失礼でも、総代だ。何とか失礼にならないように切り抜けないと、大騒ぎになるかもしれない。 「あ、総代、そう言えばほら、本部に用があるって……」  言いながら潤が御所総代の手を引っ張り立たせようとしたが、宇陀川の奴が離さなかった。  あんまり引っ張って、手が取れると困る。  潤は止めるしかなかった。 「そんなことは後でいい。俺はこいつに重要な話がある」
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