単位ほしい...?

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「ねえ、単位欲しい? 単位欲しいですか......?」 とヤギ男は純粋に俺へ問いかける。 「い、やっ...」 「単位欲しいんでしょう?だから、夜あそこまで来たんですよね?」  と再度俺に問いかける。まるで「欲しい」と俺の口から言質を取りたいかのように。思わず「欲しい」という言葉が出そうになるが、ぐっと我慢をして、 「ほ、欲しくない。単位はいらない!自分の実力で頑張るから。だから、元の世界に返してくれ!」  思わず、命乞いをしてしまう。こんな奴に通用するはずないのに...。ただヤギ男は俺の口から否定の言葉が出るとは思っていなかったらしい。ヤギ男はぶるぶると震えだして、ぶつぶつとつぶやき始めた。 「単位が、欲しくない...?嘘、単位欲しくないの...。お前は嘘をついている。言え、本当のことを言え、単位が欲しいって!言え!言え!言え!言え!言え!言え!言え!言え!言え!」  と俺の肩をガシッと掴んで、地獄の底から蘇った悪魔が叫んでいるかのごとく怒鳴り散らし始めた。右手に持っている包丁は今か今かと刺すのを待っているかのよう。 「俺は、自分の実力で取るから。いらない!」  そう言うと、ヤギ男は俺の肩から手を離した。 「もういい、もういいよ。勝手にしろ!!お前の意見なんて知らない、私も勝手にするから」  そう言って、ヤギ男は俺に向かって包丁を振りかざした。その時、 「おいおい、それはルール違反じゃないのかい?」  と落ち着いた声が聞こえてきた。ヤギ男は包丁を持って振り上げた手を静かに下して、後ろへ振り返る。先ほどの常世喫茶「冥」の店長だ。店長は静かにこっちに向かって歩き出した。
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