単位ほしい...?

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「キャーーー! だ、だれか、誰か来て。本田君が、本田君が...!」  と研究室に同期の女子が血相を変えて駆け込んできた。 「どうしたんだい、君」  ゼミ生の尋常ではない様子を見て、教授が問いかけた。同期の女子は若干過呼吸のような状態になりながらも必死に言葉を紡いだ。 「お手洗いに行こうとしたら、本田君が廊下で........、血まみれになって倒れてて!」  教授は女子生徒の言葉にさっと青ざめると、助手へすぐに指示を出した。 「なんだって?! おい、君すぐに救急車を呼ぶんだ」 「もうかけてます!」  と助手が慌てたように、スマホで119番に電話をかけている。俺は居てもたってもいられず、廊下に慌てて飛び出した。すると、廊下に本田が大の字で倒れている。頭から血を流していて、息をするのが苦しそうだった。 「おい、大丈夫か。本田?! 」  と本田の近くに駆け寄った。どうやら、建物に備え付けられてる照明が落ちて、ちょうど本田の頭に直撃したらしい。近くに照明の破片が落ちている。  でも大丈夫、このくらいの傷なら助かる。今の医療ならきっと、そう思ったときだった。ふいにぞくりと寒気を感じた。この気配をこんなにも早くまた感じることになるなんて...、後ろを振り向くと、 ___あいつが立っていた、ヤギの頭を被った悪魔が。 「ひ、ひいっ、おまえ、まさかまだ諦めてなかったのかよ。俺は自力で何とかしたぞ」  と声を上ずりながら、必死に叫んだ。なんで、なんで誰も廊下に出てこないんだろう。誰か助けてくれ。最初は俺が誰か分かっていなかったヤギ男も俺の言葉を聞いて思い出したらしい。ヤギ男がぽんっと手を叩いた。 「ああ、あの時の運のいい子だ。まさか、君もこの子と”同じ”ゼミに所属していたなんてね」  と言って静かにこちらへ近づいてくる。”同じ”ゼミとは一体何のことだろうか。その時助手の先生の言葉を思い出す。 「いや”完璧”すぎて、僕は違和感を感じるくらいだ。まるで、何か特別な資料を持っていたかのようだ」  ...まさか、本田は。 「...本田。お前、旧館へ行ったのか? 」  と思わず血まみれの本田に呟いてしまう。すると、ヤギ男は両手を大きく広げ 「だいせいかーい!!この子はちゃんと逃げ切って、資料を手に入れたよ。だから、卒論発表も終わったし回収に来たのさ」  そう言って、本田の鞄を漁り始めた。俺は思わず、 「回収って、あの資料のことか? 」  と思わず聞いてしまった。するとお目当てのものを見つけたのか、ヤギ男はすっと資料を俺に見せびらかした。 「そう、これこれ。あともう一つ回収しなきゃいけないんだよ」  えっ、資料以外に回収が必要なものってあるのか。本田も少し意識がはっきりしてきたのか、怯えながらもヤギ男に向かって口を開いた。 「僕は、ちゃんと逃げ切った!自力で逃げ切ったのに...!ほかに何を回収する必要があるんだ!」  とヤギ男に言った。ヤギ男はおやっと首を傾げながら、宣告する。 「もうひとつ回収するものはね、あなたの魂ですよ。ちゃんと表紙に書いてあったでしょ。発表が終わったら回収しに来るって」  本田はわなわなと震えながら叫んでいった。 「嘘だ、そんなこと一言も書いてなかった。僕はちゃんと確認したんだ!お前嘘ついてるだろう、騙されないぞ...!!」  ヤギ男は本田の言葉を聞いて、ゲラゲラと笑い出した。そして親切な対応で資料を本田へ見せつける。
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