2人が本棚に入れています
本棚に追加
「たん...、ほ...い...?ねえ、単位ほしい........?」
電話の向こうの相手は何を言っているのでしょうか、単位って何のことでしょう?と一瞬考えていると、マスターが私から電話を受け取って、
「後は私が対応するから、君は店の後片付けをお願いするよ。今日はもう店を閉めようと思っててね」
はてと私は首を傾げた。店の古時計を見ると、まだ店を閉めるには早すぎる時間です。でも、マスターがそういうのだから何か”理由”があるのでしょう。マスターは電話の向こうの相手に話し始めました。
「すまないね。君の探している子だけど、電話を貸してくれっていきなり店に来たと思ったら、君の声を聞いて驚いて店を飛び出して行っちゃったんだよ。まあ、まだ近くにいると思うし、”一度来てしまったら、簡単には出られないからね”。私の方でも探しておくよ。それじゃあ、また後で」
電話を切ると、マスターは珍しく困ったような顔をしていた。マスターのこんな表情はあまり見たことがありません。今日はマスターの色んな表情を観れる珍しい日ですね。
「マスター、電話のお相手は知り合いの方なんですか」
「そうなんだ。あいつも仕事とはいえ大変だな。悪いね、ちょっと用事ができたから出かけてくるよ。今日はもう店を閉めるから、君はゆっくり休憩してて」
そう言って、マスターは店を足早に出ていってしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!