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なんでこんなことになったんだ。俺が何をしたっていうんだよ! 暗い夜の大学内を必死で走りながら、俺は悪態をついた。きっかけは、数日前に遡る。
XXX区AA大学西-1棟
ゼミに行こうと研究室に向かったら、廊下で話声が聞こえた。俺と同じゼミに所属する同期のやつらだった。
「佐藤のやつ、最近本当に調子乗ってね?大手企業に内定もらったからって。単位だって、本田の過去問とかノートとか借りて、あいつ何にもしてないのに、自慢ばっかじゃん」
「でも、最近あいつ最近ひいひい言ってねえ? 卒論で一緒に組んでくれる奴がいなくて、大変そうじゃん。ほんといい気味。このまんまじゃ、卒論単位はいい成績取れないだろうなあ」
同期のやつらの言っている佐藤とは俺のことだ。みんな俺がいる前ではそんな陰口を叩かないのに、人は見ていないところで本性をだすようだ。
ちなみに俺は卒論研究を一緒に行ってくれる同期はいなかった。あのときは論文テーマが違うからと断られたが、これは意図的に避けられたのだろう。
「あいつ給付型の奨学金もらってたよな、卒業論文の単位いい成績修めないと、確かやばかったんじゃなかったっけ?」
「そうそう!このままだと最後の1年分は返済ありになると思うよ。まあせっかく大手に内定もらったんだから、頑張って働いて返済しろよって話、ははっ!」
とゼミの同期たちは俺の悪口で盛り上がりながら、廊下を歩いて行った。俺はとっさにトイレに向かって、同期達と対面するのを回避する。
同期が居なくなったのを確認すると、トイレの個室のドアに自身の苛立ちをぶつけるようにダンッと強く蹴った。
ちくしょう、俺のことバカにしやがって、何が悪いんだよ!人から過去問を借りたり、ノートを借りたり、俺が忙しい時に出席カードを代わりに提出してもらって、出席点稼ぐのだって、みんなやってるだろう!?就活だって俺個人の実力でもぎ取ったものだ。血のにじむような努力をして勝ち取った内定だ。
卒業論文もいい成績を修めて、4年間奨学金返済免除を獲得し、大学を気持ちよく卒業する予定だったのに。
なにもかも上手くいくと思っていた大学生活が予定外のことを感じている。
誰かしらと一緒に組んで研究する予定だった卒論研究は、ひとりで行うことになった。
俺と組む奴が誰もいなかった。おかげで今かなり大変な思いをしている。
ちくしょう!あいつら、覚えてろよ!絶対卒論発表で見返してやる.......。
そう思いながら、トイレから出て、ゼミへ向かおうとした時だった。他のゼミの女子大生たちがにぎやかな声で話していた。卒業論文についてだ。
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